
近藤勇、土方歳三ら新選組の隊士を結び付けていたのは、強い同門意識だ。故郷・武蔵国多摩郡で広がった天然理心流。若き日、ともに汗を流した稽古の日々が兄弟のような連帯感を生み出した。故郷では約160年たつ今も彼らの流派が守られ、息づいている。
東京都日野市の中心部、かつて大きな農家だったことをうかがわせる家並みに「誠」の文字がひときわ目立つ。六番隊組長、井上源三郎(1829~68年)の生家跡に建つ資料館。平成16年に蔵を改装して開館した。
井上家は江戸幕府直轄の多摩の自警団、八王子千人同心を務めた名門。沖田総司とも姻戚関係にあり、近くには幼い沖田が手を合わせたとされる「北原とんがらし地蔵」もある。
三男だった源三郎は、18歳頃に天然理心流師範の近藤周助に入門。兄の松五郎や近藤勇らと稽古に励んだ。浪士組として上洛し、慶応4(1868)年の鳥羽伏見の戦いで戦死。松五郎から5代目にあたる資料館館長、井上雅雄さん(71)は「近藤のお目付け役で、いつも隣に座っていたそうです」と話す。
新選組の最年長で、近藤はじめ皆から「源さん」と慕われた。「隊内でも別格の扱い。近藤は何事も最終的には源三郎に話を通していた」。幕末維新史研究家の木村幸比古さん(77)が説明する。